就活が始まった大学3年の時、手に職をつけて結婚後も続けられるような仕事をしていきたいと、なんとなく将来のことを考えたんです。その頃にちょうど東亜から入学案内が届いて、読み進むうちに学費がかからず和裁を学べることを知り「これだ!」と思いました。今までは親の援助を受けて大学まで行かせてもらったのだから、これから先は自分の力で何とかがんばっていきたい。その気持ちが後押しされた感じです。社会人となるのはさらに4年先に延びるわけですが、その分、集中して学ぼうと決意しました。
大学時代は家政科だったのですが、和裁は浴衣を仕立てた程度なので正直、不安はありました。でも授業が始まってみると、毎日が実践的な授業の積み重ねで、また先生方にも丁寧に指導していただき、すぐに不安はなくなりました。少しずつ針の運びが上達していく中では、やればやった分だけ確実に自分の力になるという充実感が得られたり、お客様がお召しになる商品でもある教材を目の前にしながら、技能面の向上とともに、精神面でも「プロの和裁士になる」という意識が高まっていきました。もちろん壁にぶつかったこともありますが(笑)、先生方や多くの仲間たちにも支えられながらがんばることができました。私の場合、目的意識がはっきりしていたので、より濃密な4年間が過ごせたのかも知れません。
卒業後、自宅の自分の部屋を仕事場にプロの和裁士として活動をはじめ、現在、訪問着や大島、振袖、留袖、コートなど、月に10数枚ペースで仕事を受けています。本当はもう少し増やしたいのですが、プロとしてやっている以上、仕立ての質に妥協したくないので、今はこのくらいだと考えています。もちろん今後は、さらに技能を磨きながら、自分にOKを出すクオリティのハードルを高めていきたいですね。自宅で働くので時間も仕事量も自由ですが、そこには大きな責任も伴います。でも、これからもずっと続けていくことができる仕事だからこそ、自信と誇りをもって仕立てに臨んでいます。